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移籍補償金・連帯貢献金・トレーニングコンペンセーション(育成費)・トレーニング費用を現役スタッフが徹底解説!!(サッカー・Jリーグ)

サッカー

サッカーにおいて移籍シーズンに最も発生する移籍金。この移籍金に連動するお金事情があるということについて深く知らない人たちが多いと感じたため記事にしました。今回は移籍に発生するクラブが得る、捻出するお金事情を徹底解説していきます。

今回説明する内容

移籍補償金とは

まず、移籍金補償金とはどのようなお金でしょうか?巷でよく聞く”移籍金”この正式名称が移籍金補償金になります。ではなぜ移籍補償金が発生するかというと、選手がまだ所属クラブと契約期間が残っている場合に限ります。いわば、”違約金”になります。

この違約金は、選手とクラブとの合意書(契約書)に記載されており、クラブと選手・代理人でその金額を設定します。獲得したいクラブは、この違約金を支払うことで、選手を獲得できるという仕組みです。また、選手とクラブの契約が終了するシーズンに、オファーを出した場合は、もちろん違約金は発生しません。

連帯貢献金とは

連帯貢献金は、移籍補償金が発生した際に、移籍金を受け取るクラブが支払うお金です。例えば、1億円で選手が移籍した際に、移籍金を手にするクラブは、その金額の5%(例えば、1億円の場合は500万円)を、12歳から23歳の誕生日を迎えるシーズンまで登録されていた育成元のクラブに支払うというものです。

また、この育成元クラブが手にする金額は、その選手が在籍した年数とパーセンテージが決まっており、この金額を算出して、移籍金を手にしたクラブに請求することができます。また、この連帯貢献金制度はFIFAのルールで決まっています。よって、海外への移籍時に移籍補償金が発生する際に、請求することができます。日本国内での移籍では、連帯貢献金発生しません。

年齢12歳13歳14歳15歳16歳17歳18歳19歳20歳21歳22歳23歳
移籍金%0.25%0.25%0.25%0.25%0.5%0.5% 0.5%0.5%0.5%0.5%0.5%0.5%
1億円の場合25万25万25万25万50万50万50万50万50万50万50万50万
12歳~15歳までは最大1% 16歳~23歳までは最大4% 計5%

このように、育成元のクラブは金額を請求できます。移籍金が多ければ多いほど請求ができるので、選手の市場価値に比例して、育成元のクラブは潤おう仕組みになっています。

連帯貢献金は移籍補償金が発生する場合はその都度請求できる

連帯貢献金は、1回のみならず、その選手が海外クラブを渡り歩き、移籍金を都度発生させた場合、育成元のクラブはその都度請求することができます。よって、以下のようなことも充分にあり得ます。

  • Jリーグクラブから海外クラブへ移籍  移籍金1億円  (連帯貢献金500万円)
  • 海外クラブから別の海外クラブへ移籍 移籍金10億円 (連帯貢献金5,000万円)
  • 海外クラブからビッグクラブへ移籍  移籍金30億円 (連帯貢献金1億5,000万円)

この場合、一人の選手で連帯貢献金2億500万円を育成元クラブに残すことができました。よってこの連帯貢献金制度は、市場価値の高いプロ選手を輩出するだけ、収入を得ることができます。

連帯貢献金で収入を得た育成元クラブ(例:冨安 健洋 選手の場合)

2021年9月に、アーセナルに移籍した冨安選手を例に挙げてみましょう。冨安選手は、イタリアセリエAのボローニャから、アーセナルに完全移籍をしました。その際の記事が以下になります。

冨安健洋アーセナル破格30億円「駆け込み移籍」背番号18「全力尽くす」 - プレミアリーグ : 日刊スポーツ
サッカー日本代表DF冨安健洋(22)がプレミアリーグ、アーセナルへ移籍することが決まった。アーセナルは8月31日(日本時間9月1日)、セリエAのボローニャから… - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

冨安選手の育成元クラブは12歳~15歳まではアビスパ福岡U-15、16歳~23歳までは、アビスパ福岡U-18であり、そのままトップに昇格していますので、アビスパ福岡が移籍金の5%(約1億5,000万円)を獲得したことになります。分配表は以下の通りです。

育成年代で所属したチームが公立の中高校だった場合は、受け取りを拒否するケースも多いようです。

トレーニングコンペンセーション(育成費)とは

トレーニングコンペンセーション(育成補償金)は、移籍補償金が発生しなくても育成元クラブにお金が支払われる制度で、FIFAが定めた国際的ルールとなります。海外では”Training compensation(TC)”と呼ばれています。トレーニング費用の重要な要素はその選手が初めてプロ契約を結ぶ際に発生するというところが重要なポイントです。

FIFAの規約上、『育成費(Training Compensation)』は以下のように定義されています。

❶『育成費(Training compensation)』 は、当該選手が初めてプロ契約を結んだ際(①)、更には、23歳の誕生日を迎えるシーズンまでの間に国際間移籍が行われた場合はその都度(②)、育成に携わったクラブに支払われるものとする。

❷ 『育成費』を受け取る資格のあるクラブは、上述の①のケースの場合は、12歳になるシーズンから21歳になるシーズンの10年間に育成・教育に関わったクラブ、②の場合は、その移籍の直前に所属していたクラブのみが対象となる。

❸『育成費』を支払うのは、上述の①の場合は初めてプロ契約を結んだクラブ、②の場合は移籍先のクラブ。

トレーニングコンペンセーションの算出方法

FIFAの規定では、国別にカテゴリーに分けて支払額が規定されています。以下が国別のカテゴリーごとの金額算出内容です。

強豪リーグほど高くなっていて、獲得クラブの大陸連盟ごとに設定されたⅠ~Ⅳの4レベルのカテゴリーごとに金額が設定されています。最も高いUEFAのカテゴリーⅠの場合以下の通りです。

※レートは概算で反映

FIFAの規約上、『育成費(Training Compensation)』の金額の計算は以下のように定義されています。

❶『育成費(Training compensation)』 を計算するに際し、各クラブは、大陸連盟によって、各国協会によって、そして各クラブによって、それぞれ最大4つの「カテゴリー」に分類される。

❷ FIFAは、毎年上述の❶のカテゴリー毎に「育成報酬金額」を制定する。

❸ 受け取る資格を持つクラブの育成費は、上記❶❷によって定められた「カテゴリー」や「育成報酬金額」に基づき、また、所属した年数に応じて算出されて行く。

❹ 「育成報酬額」は、基本的に移籍先のクラブの基準値が採用される

❺ 『育成費』を受け取る資格を持つ12歳から21歳の間の10年間に関わったクラブの内、12〜15歳の4年間に関わったクラブは、「カテゴリー4」として扱われる。

宮市 亮 選手のトレーニングコンペンセーションを算出してみた

高卒でアーセナルFCに移籍した宮市亮選手

宮市亮選手がアーセナルに高卒でプロ契約をした際の、トレーニング費用を計算してみました。まず、プレミアリーグはUEFAになるので、UEFAの金額を適用します。また、アーセナルはイングランド1部に所属するので、カテゴリーは1。(2部はカテゴリー2 3部はカテゴリー3、4部はカテゴリー4)また、12歳~15歳まではカテゴリー4に該当するルールのため、金額換算は以下になります。

※実際には中京大中京高校は育成補償金を請求していないとのことシルフィードFCも詳細は明らかにされていません。

宮市亮選手がアーセナルFCに高卒プロ契約をした際に育成元クラブが請求できる金額の換算(レートは概算)

このように、日本から初めてのプロ契約が海外クラブの場合、宮市選手の場合は総計約4,000万円程、育成元クラブに還元することができます。そういう意味では、初めてのプロ契約が海外というのも、育成元クラブからすれば、夢のある話であることは間違いないでしょう。

トレーニング費用とは(JFA)

これまではFIFA(国際フットボール連盟)が定めた国際ルールでしたが、日本国内に限っては、自国のローカルルールを採用しています。これはJFAの方で規定されています。

対象は先ほど説明した内容と変わらず、アマチュアからプロ契約になった際に発生します。

期間:満15歳の3月31日翌日の4月1日(高校1年)~満22歳の3月31日(大学4年)最大7年間

金額:直前の団体 30万円(4年まで) 15万円(5年以降)で換算。

※学校を転校した場合は、年単位で各々が算出し請求できる。

トレーニング費用の算出詳細

上記のように、在籍していた所属チームは、プロ契約を結んだクラブに請求することができます。

よって、育成元クラブもお金を稼ぐ方法としてこのような方法もあります。最近は大学から何名も一気にJクラブ加入する選手もいるので、大学もその分収入が入ります。

まとめ

長文にお付き合いいただきありがとうございました。結論、移籍金が発生すれば、育成元クラブが儲かる仕組みがあるということ、また新卒でプロ契約を結べば育成元クラブにお金が入るということをお伝えできればと思い、この記事を書きました。冨安選手の例は非常に面白い例で、いかに育成年代の選手を育てることが収入につながるかを証明できた事例であったと思います。Jクラブもアカデミー組織に本腰を入れて、移籍すれば”お金”になるというビジネスマインドを持てば、もっと日本サッカー界の経済規模が拡大していくと私は考えております。

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